電車やバスからベビーカーまで!? 身近にあるディープな世界を伝える「乗りものニュース」

300社を超えるコンテンツパートナーからニュースの提供を受けるYahoo!ニュース。経済からエンタテインメントまでさまざまなメディアが名を連ねる中で、その専門性から異彩を放っているのが、「乗りものニュース(Yahoo!ニュース)」です。

二重橋前駅に副駅名『丸の内』追加 案内類を一斉変更、深夜作業に密着!」といったいかにも鉄道ファン向けのニュースから、「高速道路『泊まれるSA』なぜ増えた リフレッシュ施設充実 そもそも長時間いていいの?」といった人々の生活に関わる話題まで、交通周りのトピックを幅広くカバーするこのメディアは、どのようにして生まれたのか。

自身も大の鉄道ファンだという恵知仁(めぐみ・ともひと)編集長に、運営方針や記事づくりの苦労についてお聞きしました。

取材・文/友清 哲

編集/ノオト

「乗り物」専門であることの意義とは

――まず、「乗りものニュース」立ち上げの経緯から教えてください。なぜ「乗り物」を題材したメディアにしようと考えたのでしょうか。

「乗りものニュース」が開設されたのは、2014年の6月です。日頃あまり意識せずに使っている電車にしてもバスにしても、少し目線を変えてみると、隠れたトリビアや興味深い情報がたくさん出てくるんです。また、交通について伝えること自体にも、メディアとしての社会的意義があると私たちは考えています。

鉄道専門のフリーライターとして活躍した後、2014年の「乗りものニュース」立ち上げ時に編集長に就任した恵知仁さん

――乗り物にテーマを絞ることで、読者が限られてしまう懸念はなかったのでしょうか。

実際のところ、鉄道や自動車、飛行機といった交通機関に、まったく関わらずに生きている人はまず存在しません。誰もが何らかの形で接点を持っているジャンルなので、題材としてのポテンシャルは高いと思っています。ただ、その読者との接点を探すのがなかなか大変で、たとえば安く旅をするテクニックなどは裾野の広いテーマですが、エンジンの仕組みを細かく解説したところで興味を持つ読者は限られてしまうでしょう。どうすればより大勢の人に読んでもらえるか、記事の切り口については常に熟考しています。

――たとえばリニアモーターカーや新型車両の登場など、何かと新しい話題の多いジャンルと言えそうです。

そうですね。車両はもちろん、ダイヤ改正もニュースになったりしますからね。記事はほぼすべてオリジナルで、取材して作成したものや鉄道や航空会社からのプレスリリースを元にしたものなどで構成しています。日々、さまざまなニュースが飛び込んで来るので、ネタが尽きることはありません。

編集部の一角には、過去の時刻表がズラリ。古いものの一部は、恵編集長の私物なのだそう

戦車やベビーカーまでも――幅広い「乗り物」の定義

――恵さんが編集長に就任した経緯は? また、編集部の現在の体制について教えてください。

私はもともと、鉄道系のフリーライターをやっていて、その縁でメディア立ち上げの際に声をかけてもらい、編集長を務めることになりました。立ち上げ時は私1人でしたが、現在、編集部員は9人で、このほかに10人ほど外部ライターさんの手を借りて、月に250本前後の記事を配信しています。

――鉄道や自動車に興味を持つ層は男性が多いイメージがありますが、実際の読者層は?

おっしゃる通りメインは30~40代の男性ですが、乗り物のジャンルによって少し世代が異なります。鉄道系については高校生など比較的若い方によく読まれていますし、自動車の場合はやはり、実際に購入を検討できる世代の関心が高いですね。

――そうした代表的な交通機関のほかに、「ミリタリー」のような、一見乗り物ではないジャンルも扱われています。「乗りものニュース」では、どこまでを「乗り物」としているのでしょうか?

乗り物の定義については、わりとゆるく捉えています。たとえば、スケートボードや自転車だって乗り物なので、話題さえあれば扱うつもりです。ベビーカーにしても、製品としてはないものの、電車内でのマナー問題として取り上げたことがあり、多くの反響をいただきました。

ミリタリーも、一般の人が戦車に乗ることは普通ありませんが、乗り物であることに変わりないですし、何より乗り物好きな方とミリタリーのファン層は重なっているようで、好評なジャンルです。

また、ユニークなところでは、山形県で開催された「日本一の芋煮会フェスティバル」に関するネタが話題を集めました。これは、ショベルカーをお玉代わりに使って、巨大な鍋で約3万食もの芋煮を作るイベントなのですが、そうした重機はいわば「働く乗り物」ですよね。

徹夜だけど役得!? 「乗り物」というテーマならではの苦労

――取材活動を行う上で、乗り物というジャンルならではの苦労はありますか?

現場取材の場合、場所や時間が変則的であることです。たとえば、夜中の0時に静岡県の駅でアポイントとなるケースもあります。特に鉄道は、運転を終えた深夜に作業を行うので、徹夜で取材をする機会は多いですね。ただ、これは一般の乗客であればまず見られないシーンですから、苦労である半面、役得だと思っています。

以前、深夜に東海道新幹線の非常時訓練が行われた際は、真夜中の線路の上を歩いて車両に乗り込む体験もできました。ほかにも豪華寝台列車、JR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」やJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の車内を見せてもらえたのも、個人的にいい思い出ですね。

恵さんが取材時に撮影した、走行中の東海道新幹線N700系運転席(画像提供:乗りものニュース)

――恵さんをはじめ、ライターの皆さんにとっては、趣味と実益を兼ねている仕事ですね。

そうですね。ただ、取材を終えて新幹線や飛行機に乗り込んでも、移動を楽しむ暇もなくひたすらパソコンに向き合わなければならなくなったのは少し残念ですが……(苦笑)。

その一方で、取材相手が「乗りものニュース」の読者であるケースも多く、現場で「いつも読んでますよ」と言ってもらえるのはやはり励みになります。また、開設直後からYahoo!ニュースと提携しているおかげで、「Yahoo!ニュースで記事を見ましたよ」と声をかけてもらえることも少なくありません。

――現状、メディアとして抱えている課題はありますか。

新しい情報を伝えることはもちろんですが、いかに他のメディアと違った視点や切り口で記事を提供し、読者の皆さんの生活に役立ててもらうかは、今以上に考えていかなければなりません。そのためにやれることは、まだまだたくさん残っているはずですから。たとえば、ファミリー向けの企画もその1つ。最近はお子さんの影響で鉄道ファンになった「ママ鉄」という層も存在しますし、より広い層に価値あるコンテンツを届けていきたいですね。

編集部内に飾られている乗り物にまつわるグッズの数々

――昨夏から動画コンテンツをスタートさせたのも、その一環ですね。

鉄道ファンの中には、列車が走る”音”を楽しむ「音鉄」というジャンルもあるくらいですから、音声も一緒にお届けできる動画は、これから重要なコンテンツになっていくと思います。まだまだ始めたばかりで手探りの部分も多く、通常記事に比べてコストがかかるといった課題も山積みですが、これから一層力を入れていくつもりです。

有料版やコミュニティー化への挑戦――「乗りものニュース」のこれから

――そうして細分化されたファン層のニーズを踏まえなければならないのは、このジャンルならではですね。

その通りですが、私たちとしては決してコアなファン層だけを狙っているわけではありません。自分の好きなことを好きなように伝えるのは簡単ですが、より広い読者を取り込んでいくためには、むしろ熱心なファンの方にとって少し物足りないくらいのさじ加減がベストではないかと考えています。

その代わり、よりディープな世界を楽しみたい人向けに、この2月からは有料会員制のプレミアムサービスも始めました。今後、コアなファン向けの企画は、こちらで展開していくことになります。どうしてもPVを重視せざるを得ない無料メディアと、対価をいただくことでさらに踏み込んだ記事をお届けする有料メディア。この両輪で回すことで、メディアをさらに発展させていければと考えています。鉄道や飛行機は専門誌が存在するジャンルなので、十分にそのニーズはあるでしょう。

――まだまだ進化を続けている最中という印象を受けますが、「乗りものニュース」はこれからどうなっていくのでしょうか。最後に展望を聞かせてください。

現在の「乗りものニュース」は、あくまで情報を発信するメディアとしてのイメージが強いと思いますが、今後はそれだけでなく、情報が集まる双方向性のある拠点として機能させていきたいです。そのためにすでに、SNS的にファンが集まってさまざまな話題でコメントし合う「みんなの乗りものニュース」というサービスもスタートしました。まだ試行錯誤の段階ですが、ゆくゆくは「交通や乗り物に関する情報は、『乗りものニュース』にアクセスすれば何でもわかる」と言われるレベルまで引き上げたいですね。

Source: http://www.huffingtonpost.jp/feeds/japan/index.xml

Previous Post Next Post

You Might Also Like

No Comments

Leave a Reply