ロンドンのアメリカ大使館移転、トランプ氏は「大損」って言ってるけど…

アメリカのドナルド・トランプ大統領は1月11日夜、2月に予定されていたイギリス訪問を取りやめるとTwitterで発表した。

トランプ氏は当初、新たに移転したアメリカ大使館の落成式に出席する予定だった。しかしトランプ氏は、今回の大使館移転を「気に入らない」という理由で、訪問を中止した。

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ロンドン訪問を中止したのは、ロンドンでおそらく最も立地が良くて立派な大使館を、オバマ前政権がピーナッツが買えるくらいの二束三文の値段で売って、街外れに12億ドルかけて新しいものを建てたのが気に入らないからだ。大損だよ。落成式でのテープカットを頼まれたが、断る!

たしかに新しい大使館の建築にかかった費用が巨額だったのは正しいが、バラク・オバマ前大統領に責任があるとする批判を含め、彼の主張は正しいとはいえず、これまでの経緯も無視したものだ。

大使館の移転は、オバマ政権以前に決まったことだった。

ロンドン中心部にあるグロブナースクエアから、テムズ川南岸の「ナイン・エルムズ・オポチュニティ・ゾーン」に大使館を移転させる計画は、実際にはジョージ・W・ブッシュ大統領の任期中に決定したことだ。建設を開始したのは、オバマ政権下の2013年だ

ロバート・タートル駐英アメリカ大使は2008年10月、大使館移転について「長期にわたり、慎重に進められてきた」と述べている。「現代的で、安心できて、環境的に持続可能な大使館にするには、新たに建設することが最善だとわかったのです」

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新しいアメリカ大使館

アメリカは、旧大使館がある土地を所有していなかった。

旧大使館があった土地は、世界的な大富豪のウェストミンスター侯爵が所有していた。しかしアメリカは、世界中にある大使館について、ほぼ土地も所有している。

1960年に旧大使館が竣工した際、年に1回、イギリスがわずかな地代をアメリカに請求することを定めた長期的な土地賃貸契約に両国は同意していたという。

2016年に亡くなった第6代ウェストミンスター侯爵は、アメリカへの土地売却を拒絶し、かつては「アメリカ独立戦争の間に没収された我が一族の土地を返すと約束しさえしてくれたら、この土地を売ってやってもいい」と、冗談を言っていたという。

現在の大使館の建物は、カタールの政府系ファンドが2009年に購入。高級ホテルに改装するための許諾を2016年に取得している。

ロンドンの旧アメリカ大使館。

大使館を「二束三文」で売却したわけではない。

新大使館の建設費は約10億ドル。建設費用としては極めて高額だ。アメリカ大使館は、ロンドンに所有する不動産の売却益だけで建設したと主張しているワシントン・ポストによると、これには現在の大使館の売却益も含まれている。アメリカがいくらで売却したかは不明だが、新大使館の建設はアメリカの納税者に負担が全くかからない形で行われたことが分かる。

大使館の現在の所在地は、トランプ氏が主張するように「一等地」だとは言いがたい。

現在の大使館は人通りの多い広場にあり、安全の確保が難しい。そしてその警備体制は地元住民から不評だった。2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロの後、テロの対象になりうる建物の近くでの生活を強いられているとの地元住民からの抗議を受け、アメリカは80d0万ポンド(約12億円)を警備体制のアップデートに費やした。

ウェストミンスター市議会のロバート・デイビス議長は2008年、「交渉してきた警備体制が機能している中でアメリカ大使館が移転するのは残念だ。しかし、さらに安全な施設に移りたいという要望は理解する」と述べている。

また、渋滞が多いロンドン市では、アメリカの大使館員にも渋滞税を課すことになっているが、彼らは支払いを拒否してきたようだ。交通量を減らす試みとして、平日にロンドン中心部に車を乗り入れるには、決められた金額を支払う必要がある。アメリカ大使館のスタッフは、約1500万ドル(約16億円)を市に支払う義務がある。

新大使館は、外れにあるとは言えない。

新大使館のロケーションは、大使館の最も重要な任務のひとつ、現地の政府と連携するという条件を満たしている。

タートル駐英アメリカ大使は、「イギリスは我が国の最も重要な友邦であり、同盟国だ。そのため、我々は議会および政府機関のビルに、現在と同様に近接した場所を望み、それを実現した」と述べている。新大使館の建物は、ロンドンのイギリス情報局秘密情報部(MI6)本部から歩いていける距離にある。

この移転は、近隣地域に大きな恩恵をもたらすようだ。「大使館は新たな投資を呼び込み、数多くの雇用と住居を提供してくれ、地域は活性化しています」と、ロンドン市議会のラヴィ・ゴヴィンダ議員は語っている。

訪問への抗議活動も、計算に入れていたかもしれない。

ロンドンに行かない決断は正しかったのかもしれない。さらに大統領としての体面を損なう可能性があったからだ。

ロンドンのサディク・カーン市長は12日、「大統領は間違いなく、非暴力の大規模な抗議行動に迎えられることになる」と述べた。「多くのロンドン市民が、対立を煽るような政策を続けているトランプ氏を歓迎していない。トランプにもそれが分かったようだ」

実際、多くの人々が、トランプ氏の訪問に合わせて抗議行動を計画していた。

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対立を煽る政策をとる限りトランプ氏を歓迎しないと、多くのロンドン市民が意見表明している。トランプ氏はそのメッセージを受け取っているはずだ。テレーザ・メイ首相がトランプ大統領を国賓として招待したことが、そもそも間違いだったと言える。

イギリス政府との緊張関係が続く中、トランプ氏のロンドンは訪問は当初から議論を呼んでいた。トランプ氏は、イギリスのテロ対策について、メイ首相とカーン市長を一貫して批判している。一方メイ首相は、イギリスの極右団体「ブリテン・ファースト(英国第一)」が投稿した反イスラムの動画をリツイートしたトランプ氏を非難している

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
Source: http://www.huffingtonpost.jp/feeds/japan/index.xml

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