粋な競馬の楽しみかた。世界が注目するフランスの「凱旋門賞」もうひとつの魅力とは?

過ごしやすく食べ物がおいしい秋がやってきた。旅行やファッション、スポーツなど楽しみが多い秋に、もっともおすすめしたいのが「競馬」だ。秋は菊花賞や天皇賞などG1レースが盛りだくさん。年末の有馬記念まで毎週のように注目レースが続く。

日本で競馬といえば、年配の方の娯楽というイメージを持つ人もいるかもしれないが、ヨーロッパでは日本のそれとは少し趣が異なる。紳士淑女が楽しむスポーツ(レース)であり、その昔は貴族たちの娯楽として発展してきた経緯があるため、より文化的な位置づけだ。

競馬ファンならずとも注目したいのがフランス・シャンティイで開催される「凱旋門賞」。凱旋門賞は、数ある国際レースの中でも最も伝統的で格式高く世界最高峰レースといわれている。世界のホースマンたちが憧れる夢の舞台だ。

競馬場に馬が運べない?凱旋門賞の誕生秘話

凱旋門賞の歴史は1920年︎までさかのぼる。第一次世界大戦直後のフランスで、敗戦したフランス国内を盛り上げるために誕生した。一流の名馬たちをパリに集結させ世界王者を決める。そう銘打って始まった凱旋門賞だが、戦争で疲弊したヨーロッパ各国において、競馬どころではないという空気感があったのだろう。鉄道などの交通機関が破壊され競走馬の輸送が困難だったことも大きな痛手となった。そのため開始当時は”一流馬たちを集めた夢の競演”を叶えることなく終わった。

その後も世界情勢の波により、外国馬が参戦できない年や、第二次世界大戦によって中断になるなど不遇な時代が続いた。しかし賞金も徐々に高額になり、ヨーロッパ各国からの参戦も増えてきたことで、華やかで格式高い現代の凱旋門賞に成長していった。

凱旋門賞を優美に彩る「帽子」のひみつ

凱旋門賞では、レース観戦のほかにもう一つ注目を集める、ある特殊な慣習がある。それは、会場内を彩る優美な帽子たちの競演だ。世界が注目するレースだけあって、多くのセレブたちがドレスアップして集い、女性たちは大きな帽子をかぶって非日常のおしゃれを楽しむ。世界のメディアが、この女性たちがかぶる帽子にスポットを当てたことで、凱旋門賞の知名度や世界的地位を高めていったとも言えるだろう。

凱旋門賞で着用されている帽子の数々を手がけてきたパリ在住の帽子デザイナー村山京子さんに、その背景を聞いた。

帽子デザイナー村山京子さん。石川県出身、パリ在住。「サロン・ド・シャポー学院」を卒業後、パリ エコール・デ・ボザール留学。老舗帽子ブランド「メゾン・ミッシェル」に在籍、シャネルやディオールなどのブランドデザインを手がける。その他、演劇、オペラ、ファッションショーなど幅広く活躍中

——凱旋門賞で女性たちはなぜ特徴のある帽子をかぶるのでしょうか?

第二次世界大戦後、戦争で中断されていた競馬が再開されました。ファッションに関心のあるフランスでは、当初から帽子をかぶった男女が目立っていたそうです。紳士はシルクハットに女性は婦人帽をかぶり、競馬観戦は再び華やかさを取り戻したのでした。

2001年に、凱旋門賞の当時のスポンサーであったLucian barierre グループとマダムフィガロによって帽子のコンテストが開催されました。それをきっかけに「帽子やヘッドドレスを身に着けた女性たちは無料で入場できる」という特別なルールが生まれたのです。

時代とともに観戦者も増え、女性たちはエレガントで個性豊かな帽子で競い合い、いっそう華やかになってきていると思います。

競馬が好きで、パリにあるヴァンセンヌの森で公式競馬を開催したマリー・アントワネット。そのとき作られたルールが現在にもつながっていることから、フランスの近代競馬の母ともいわれています。ファッションリーダー的存在だった彼女は、華やかな衣装や帽子、髪飾りを身に着け競馬場を彩り、ファッションをリードし続けました。

それが後世のデザイナーたちのインスピレーションに大きく影響し、刺激を与えています。凱旋門賞を観戦する現代女性達にも、そのエスプリを感じとることができます。

村山さんが手がけた作品の数々

——フランス人女性は、帽子にどのようなこだわりを持っているのでしょうか。

教会での結婚式や葬儀以外だと、パリの街で日常的に帽子をかぶっているフランス女性は、東京よりも少ないと感じます。意外に思われるかもしれませんが、パリの女性たちは、かぶり物などのファッションで冒険する人は少ないのです。

ただ凱旋門賞やディアンヌ賞などの競馬観戦のときは違います。ヨーロッパでは競馬そのものの背景が貴族文化です。競馬場の周りは美しい森やお城、高級避暑地があり、そんな優雅な風景の中で競馬観戦を楽しみます。会場で開催されるハットコンテストを目的にして来られる方もいらっしゃるほど。女性たちは、ここぞとばかりにエレガンスで個性的なファッションセンスを発揮します。

広大な自然の中でシャンパングラスを片手に優雅で贅沢な時間を楽しみます。男性は馬で競い合い、女性はファッションで競い合う。凱旋門賞は、おしゃべり好きなフランス人たちの社交の場でもあるので、帽子は自己表現をするための大切な装飾なのです。

フランスの女優Maud Dhénin(モッド デニン)さん

——凱旋門賞のために手がけた作品で思い出深いものはありますか?

フランスギャロ(競馬統括機関)の主催する展示ブースで、帽子のデザイン製作に携わりました。またオフィシャルパートナーである、スイスの時計ブランド「ロンジン(LONGINES)」との企画では、数々のおもしろい経験をさせて頂きました。

凱旋門賞では、アートなピアノ帽を作り当日それをかぶって広告塔になるというお仕事。「皆でかぶれば怖くない」といったノリで楽しみました。また、ロンジンにちなんで時計を表現したウォッチハットやゲストシンガーがかぶるシルクハットなど、競馬の祭典にふさわしい帽子を幾つも作らせていただきました。

広告塔としてピアノをモチーフに作られたピアノハットをかぶる村山さん(写真左から2番目)

ゲストシンガーのMICKY GREEN (ミッキーグリーン)さん。帽子は村山さんが手がけた

——村山さんは、凱旋門賞をどのようにご覧になっていますか?

緑の絨毯のような美しい芝生の上を、優雅に一瞬にして走り去った馬と騎手に心が奪われました。

ボックス席で観戦させて頂いたことがあるのですが、育ちのいい上品なまだ10代の若者が大勢、競馬観戦を楽しんでいたのには驚きました。おそらく馬主かスポンサーのご子息方かと思います。既に乗馬もたしなみ、大人の世界に入って競馬観戦をしているのを見て彼らの早熟の源はここにもあるのだと文化の違いを感じました。それと、凱旋門賞は御良家の子女たちのお見合いの場にもなっているとか。ステキな「社交の場」でもあるのですね。

日本から初めて凱旋門賞にいらした方々は、ダンディーな男性、おしゃれな女性たちを見て日本の競馬場とは違うなあと圧倒されているご様子でした。

日本から凱旋門賞を訪れた元タカラジェンヌのお客様。村山さんの作品を着用

今年の凱旋門賞の見どころは?

凱旋門賞は、日本からもこれまでにディープインパクト、オルフェーヴルなどの名馬たちが夢の舞台に挑んでいるが、未だ優勝は果たしていない。

今年の凱旋門賞は、日本から昨年3歳にして有馬記念を制したサトノダイヤモンドと、重賞レースを4勝しているサトノノブレスが出走予定となっている。いずれも父ディープインパクトの血を引く良血馬だ。

2015年の凱旋門賞に挑んだオルフェーヴルは、惜しくも2着に終わった

国によっても大きく異なる競馬の世界。文化的、歴史的背景をのぞいてみたら、より深くその魅力を知りたくなる。

もし競馬をやったことがないという人がいたら、この秋ぜひ挑戦してみてほしい。初心者でも大丈夫。なんとなく勝ちそうな馬を予想して、まずは100円で馬券を買ってみよう。それだけでもレース観戦が100倍楽しくなる。もちろん金額によってドキドキ感やスリルを味わえるだろう。

競馬は紳士淑女のたしなみでもあり、誰もがワンコインで気軽に楽しめるレジャーでもあるのだ。普段より少しおしゃれをして、競馬場に出かけてみるのもいいかもしれない。

10月1日に開催される凱旋門賞の馬券は、JRAのネットサービス「即PAT」からのみ購入できます。2016年に海外馬券の購入が解禁となり、凱旋門賞の馬券が日本国内でも購入できるようになりました。

Source: http://www.huffingtonpost.jp/feeds/japan/index.xml

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