この人に聞く:国際移住に取り組む、ルイーズ・アルブール事務総長特別代表

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2017年4月28日 – 難民と移民の大規模な移動は、一国が単独で対応するには大きすぎる問題であるという認識に基づき、国連は2016年9月、世界のリーダーを招集し、持続可能な解決策を探るための会議を開催しました。このサミットでは、加盟国193カ国がすべて、ニューヨーク宣言という同一のプランのもとに結集することで、人命を救い、権利を守り、グローバルな規模で責任を共有するという政治的意志を表明しました。

“移住は極めて大きな課題です。最近では世論の大きな関心の的にもなっています。政府部内でも、家庭の食卓でも話題に上っています。誰にでも関係のある課題だからです。それは今に始まったことではありません” - ルイーズ・アルブール特別代表

会議のフォローアップとして、アントニオ・グテーレス事務総長は2017年3月、カナダの法学者で弁護士、検察官の経験も有するルイーズ・アルブール氏を自らの国際移住担当特別代表に任命しました。

国連人権高等弁務官や、旧ユーゴスラビアとルワンダに関する国際刑事裁判所の主任検察官も歴任したアルブール氏は、2018年に採択が予定されている安全な秩序ある正規移住に関する史上初のグローバル・コンパクトの策定に向け、加盟国と連携するという任務を担います。

アルブール氏は、国際移住に関する国連の権利擁護活動も先頭に立って進めることになりますが、その中には「TOGETHER」キャンペーンに対する支援も含まれています。同キャンペーンは、難民と移民に関する新たな対話を通じ、社会的一体性を高めながら、難民と移民に関する否定的な固定観念や嘘に立ち向かおうとするものです。アルブール特別代表はまた、難民問題に関する政策的助言を提供するとともに、国連主体による関連活動の調整も図ります。

先日、国連ニュースのインタビューに応じたアルブール特別代表は、移住の否定的な側面ばかりが強調され、多くの国の繁栄に移住が果たしているプラスの役割がかき消されているとして、移住について語る際の視点をもっと豊かにする必要性を指摘しました。

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UN News:あなたは2017年3月、国際移住問題担当事務総長特別代表に任命されました。この課題にどのような広がりがあるのか、そして今後はどのような課題に取り組む必要があるのか、教えていただけますか。

ルイーズ・アルブール:移住は極めて大きな課題です。最近では世論の大きな関心の的にもなっています。政府部内でも、家庭の食卓でも話題に上っています。誰にでも関係のある課題だからです。それは今に始まったことではありません。地球上に人間が生まれて以来、人々は移動を続けています。しかし、現代では技術や交通の発達により、人間の移動能力がさらに増しているのです。

移住は、迫害や紛争地域を逃れる難民から、いわゆる経済移民、つまり時には自発的に、また時には自らの選択ではなく、仕事を探したり、家族と一緒に暮らしたりするために出生国や出身国を離れることをやむを得ず決定した人々まで、あらゆる様相を呈しています。

最も信頼できる推計によると、世界には現在、2億4,500万人の移民がいます。総会は昨年9月、安全で秩序ある正規移住を促進するという義務を自らに課しましたが、私たちにそのための手段が整っているかどうかは確信できません。

動画:ルイーズ・アルブール国際移住担当事務総長特別代表は、移民や難民が社会にもたらす利益を強調する必要性を指摘。

UN News:特別代表として、あなたは2016年の難民と移民の大規模移動に関するハイレベル・サミットのフォローアップを主導することになります。今後のグローバル・コンパクト策定の交渉では、どのような役割を果たすつもりですか。

ルイーズ・アルブール:総会は昨年9月のニューヨーク宣言で、加盟国を主体とする移民対策プロセスの立ち上げを決定しました。私の役割は、このプロセスを支援し、国連の内部にあるすべての知識とノウハウ、アイデアを結集するとともに、昨年9月に国連の関連機関となった国際移住機関(IOM[別窓])とも調整を図ることにあります。つまり、こうした知識を総動員して、加盟国による交渉を支援していくということです。

私には、政策を策定したり、アイデアを練ったり、イニシアティブを考案したりする役割のほか、権利擁護の役割もあります。2018年の暮れには、加盟国が移住に関するグローバル・コンパクトを結ぶことになる大きな会議が予定されていますが、私はそこでも、事務総長の代理を務めます。これと並行して、難民問題に特に取り組むプロセスも進められます。難民は実質的に、移民の一類型ではありますが、難民条約という特別な条約の対象となっています。つまり、難民については、定義がより進んでいるということです。移民のさらに一般的な取り扱いについては、まだすべき作業がたくさん残っています。

UN News:2018年の会議で移住と難民に関する2つのグローバル・コンパクトを採択するまでの今後18カ月の間には、主にどのような通過点がありますか。

ルイーズ・アルブール:加盟国はそのためのプロセスに合意しています。この正式なプロセスは、異なる移住関連のテーマを取り扱う6つの会合からなっています。ジュネーブで5月初旬に開催される第1回会合では、移民の人権問題と、人種主義、排外主義、そして不寛容全般に関連する問題を具体的に取り上げます。

5月下旬に予定される第2回会合では、移住を推進する原因について話し合います。これは、人々に移動を促したり、出身国を離れることを強いたりするプッシュ要因やプル要因と呼ばれることもあります。つまり、出身国、通過国、目的地国のすべてを包含する問題です。さらに、労働問題や移住のガバナンス、人身取引、密航など、数多くの問題を取り扱う会合も行います。

このテーマ別会合が終わる秋から年末までの間には、加盟国に現状認識を促すための総括会合を行います。その後、2018年の1月から7月にかけて、交渉のたたき台となる協定案の起草が行われる予定です。以上が正式なプロセスです。

これと並行して、私は話し合いを活発にするため、政策立案者だけでなく、特に世論の動員も図ろうと考えています。人々が移動するというのはどういうことなのか、その管理をどのように改善できるのかに関する話を人々がよりよく理解できるようにするためには、多くの教育も必要だと思います。

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難民と移民の大規模移動に関する国連ハイレベル・サミットで共同議長を務めるヨルダンのラーニア・アル=アブドゥッラー王妃(中央左)とカナダのジャスティン・トルドー首相(中央右)。国際移住は多くの会合で議題となりながら、決して中心的な課題として取り組まれることはなかったが、持続可能な開発のための2030アジェンダとこれに対応する持続可能な開発目標(SDGs)は、移民が包摂的な成長と持続可能な開発に貢献することを認識している©UN Photo/Loey Felipe

2010年、ハイチに壊滅的被害を及ぼした大地震の後、海外に住む家族からの送金を受け取ろうと行列を作るポルトープランスの人々。開発途上国の経済では、海外からの送金が極めて重要な役割を果たしている。2015年の開発途上国への送金額は4,320憶ドルと、同年の政府開発援助(ODA)の3倍を超えている©UN Photo/Sophia Paris

2014年に開発途上国からの移民が自国へ送金した金額は4,360億ドルと、対2013年で4.4%増加し(2015年の世界銀行推計)、政府開発援助(ODA)の金額をはるかに上回っている。写真は、ソマリアの首都モガディシュで顧客に対応する店主。アフリカの角地域にあるソマリアでは、数百万人が海外に住む親類や友人からの送金に頼って、ぎりぎりの生活を送っている。国連開発計画(UNDP)によると、ヨーロッパと北米で暮らすソマリア人による母国への送金額は、年間16億ドルに上ると見られている©UN Photo/Stuart Price

新たに国際移住担当特別代表に任命されたベテラン国際公務員のルイーズ・アルブール氏とアントニオ・グテーレス国連事務総長。アルブール特別代表はこれまで、国連人権高等弁務官や、旧ユーゴスラビアとルワンダに関する国際刑事裁判所の主任検察官を歴任している©UN Photo/Mark Garten

UN News:難民と移民に対する差別や暴力が広がっています。国連は「TOGETHER」キャンペーンを立ち上げ、すべての人の尊重と安全、尊厳の確保に努めています。なぜこのキャンペーンが必要なのか、また、先ほどお話があった政府間プロセスと、このキャンペーンがどのように関係してくるのか、聞かせてください。

ルイーズ・アルブール:「TOGETHER」キャンペーンはまさに、加盟国による移民問題への取り組みを支援するためにあるといっても過言ではないでしょう。政策立案者に向けて、かなり複雑な政策的主張を行う必要もあるでしょう。ある国で働く移民が、母国に対して行っている送金について話すこともできるでしょう。実際、こうした送金は莫大な額に上り、国際的な開発援助の金額をはるかに超えています。多くの人々はこのことに気づいていませんが、これは移住がもたらす多くの好影響の一つです。

“移住のマイナス面に圧倒的な関心が向いているために、出身国、目的地国双方の、非常に多くの国々がこれまで、極めて大きな恩恵を受けているという事実が覆い隠されてしまっています”
- ルイーズ・アルブール特別代表

確かに、政策立案者や政策決定者に語りかけることは必要ですが、こうした人々が正しい決定を下すための知見、そして時には勇気を得るためには、世論の支持があると感じる必要もあります。また、政策を策定する際には、より多くの人々を話し合いに参加させることが欠かせません。ある程度、語り口を変えるということも考えています。移住について語る際の視点を広げて、移民自身だけでなく、移民が最終的に定住する国にとっても、多くのプラスの側面があることを訴えるのです。移民は定住国に暮らすことで、労働者として生産に従事したり、家賃を払ったり、消費税を収めたりするからです。

よって、私は「TOGETHER」キャンペーンが、移民を疑いの目で見たり、負担や脅威として捉えたりするような固定観念のいくつかを打破する手段として、非常に重要になると思います。確かに現実を見れば、人間の営みがすべてそうであるように、マイナスの側面もあることは認めなければなりません。ルールを守らない人々もいるからです。

しかし現時点では、移住のマイナス面に圧倒的な関心が向いているために、出身国、目的地国双方の非常に多くの国々がこれまで、極めて大きな恩恵を受けているという事実や、私たちの集団的な暮らし方が将来、移住によって一変する可能性が完全に覆い隠されてしまっていると思います。

UN News:国連の人権専門家は、難民と移民に関する新しいグローバルな枠組みで、障害を持つ人々も社会サービスや保健サービスを簡単に受けられるようにすべきだと述べています。この懸念についてはどうお考えですか。

ルイーズ・アルブール:他のあらゆる人と同様、移民もその地位に関係なく、基本的人権の尊重と保護を受ける必要があるということは、はっきりさせておかねばなりません。私たちは何年も前から、一定の脆弱性を抱えているさまざまな集団や人々についても、同じ主張を行ってきました。ある時は子ども、またある時は障害を持つ人々が、そのニーズに適した取り扱いを必要とすることがあります。それは一部の人を優遇するということではなく、他の人々との平等を確保するために必要なことなのです。交通機関を利用できるようにすることは、わかりやすい例といえるでしょう。

少し奇妙に聞こえるかもしれませんが、移民の場合には、特に正式な身分証を持たない非正規移民が、その非正規状態ゆえに、社会的にさらに弱い立場に追い込まれています。例えば、自分自身や子どもに必要な基礎的医療さえ利用できない場合が多くなっているのです。このように、非正規滞在であることが脆弱性を高めることがあります。この場合も、何らかの人々を優遇または特待することが求められるわけではありません。大切なのは、その状況に関係なく、すべての人の尊厳と尊厳を差別なしに守ることなのです。

しかし、一つ強調しておくべきことがあります。それは、新しい国に到着した移民は、国内で最も貧しいコミュニティーに受け入れられたり、紛れ込んだりするという点に留意する必要があるということです。私たちがこうして新たに到着した移民のニーズに関心を払う場合には、移民を受け入れるコミュニティーにも具体的な恩恵をもたらすことが極めて重要になると思います。

それは、ほとんどが戦争によって生じる難民とは異なり、飢饉や劣悪なガバナンス、あらゆる類の欠乏によって生じた大量の移民を、ときには予期しない形で受け入れなければならない国に当てはまります。この場合、私たちは移民を人道的に援助するだけでなく、あとに残された人々や、移民を受け入れ、わずかな生活の糧を共有する人々も支援する必要があるのです。

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原文(English)は こちら をご覧ください。
Source: http://www.huffingtonpost.jp/feeds/japan/index.xml

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